2012-06-30から1日間の記事一覧

大江健三郎『懐かしい年への手紙』メモ

「ギー兄さんよ、あなたは怒りを発した。それからは、挑発に倍して自分から攻撃的になって行った。──おまえたちは森の力にそって生きる恩寵を拒んだ以上、森の異教徒として、その力の脅威を惧れながら暮してゆくほかあるまい、とその場にいた誰もよくは理解…

sur l'association

これから図書館でポール・ヴィリリオの『民衆防衛とエコロジー闘争』と島田雅彦の『英雄はそこにいる』を借りてくるが、その前にここ数日気になっていることをメモしておく。それはプルードンの"association"(連合、アソシアシオン、アソシエーション)概念…

com-post投稿

私も史実といいますか、技術的条件を重視したほうがいいように思います。何か深刻な精神的、「実存的」な変容だと看做したものが、実は、録音技術の未発達の結果でしかなかった、という平凡な現実は、如何にもありそうなことですよね。林さんの御投稿があり…

(社会)科学方法論 6

マルクス主義の歴史観の問題は、そこにおいて歴史、世界史に目的論が持ち込まれることである。マルクス没後もそうであり、レーニンが『帝国主義論』を著したとき、彼にとって帝国主義とは、資本主義の最高の段階であるとともに最後の段階、最終段階であった…

(社会)科学方法論 5

『資本論』かどこかでマルクスは「人間の解剖は猿の解剖に役立つ」といっているそうだが、これは、ダーウィニズムなどの生物学的な考え方と微妙だが決定的に異なっている。どこが違っているのかというと、思い出していただきたいが、生物進化の学説において…

(社会)科学方法論 4

ここで漸くマルクスの『資本論』に戻ることができるが、そこでは「商品」から出発される。マルクス自身はそれを、生物学者が顕微鏡で観察する細胞組織に喩えているが、ニュートン物理学を科学性の規範とし、「観念」、「印象」などの抽象的に還元された要素…

(社会)科学方法論 3

マルクスに戻る前にフロイトの隘路について触れたいが、まずいえるのは、後にラカンは「数学素(マテーム)」によって精神分析学を根拠づけようとしたのだとしても、フロイト自身にはそのような数学化の志向はないということである。彼自身は、生理学、生物…

(社会)科学方法論 2

『心理学』のウィリアム・ジェイムズは、連合心理学の要素還元主義を批判し、「意識の流れ」こそリアルなのだと主張し、同時代人、例えば『ユリシーズ』のジェイムズ・ジョイスや『善の研究』の西田幾多郎などに多大な影響を与えたし、哲学・思想のレヴェル…

(社会)科学方法論

漠然と「人文(学)」と呼ばれる領域があり、人間性への批評・洞察が語られたり、歴史の事実が記録されたりしている。ところで、人間、心理、社会についての一定の知の構築を目指す人間諸科学、社会科学、社会学、心理学などはそれとは別である。人間本性=…

(社会)認識の方法

昨晩書いた考察の続きを少し展開してみたいが、マルクスの『資本論』の議論は幾つかの方法で編成されていると思うが、彼が序文で明確に述べているのは、「抽象力」というものである。生物学者が顕微鏡で細胞を研究するように、自分は「抽象力」で商品、価値…