(社会)科学方法論 2

『心理学』のウィリアム・ジェイムズは、連合心理学の要素還元主義を批判し、「意識の流れ」こそリアルなのだと主張し、同時代人、例えば『ユリシーズ』のジェイムズ・ジョイスや『善の研究』の西田幾多郎などに多大な影響を与えたし、哲学・思想のレヴェルでいえばフッサールベルクソンと問題意識を共有していたといえる。ところが、20世紀以降はフェヒナー、ジェイムズも非科学的であると顧みられなくなったが、フェヒナーの実験は精密ではなく、ジェイムズも内観に依拠していたからである。だが、20世紀以降今日まで続けられている科学的心理学を構築する努力は大変困難なものである。パヴロフの条件反射、ワトソンの行動主義心理学では人間心理について何も具体的に理解できないし、スキナーの認知心理学、「オペラント条件付け」でも同じである。ゲシュタルト心理学発達心理学はまた別かもしれない。ゲシュタルト心理学者は人間のみならずチンパンジー(ケーラー)、発達心理学は乳幼児を観察してきたが(ピアジェ、ワロン以来の伝統)、科学を遂行する科学者以外の他者、猿や赤ん坊を客観的に観察してみたから確実性に到達するわけではない。現代有力な心理学的な考え方は、感覚・知覚や情動などをダーウィニズムとの関わりでみようとするものである。

フロイトは、初期はともかく自分の立場を確立してからは、「心理学者」を自認していないから(『科学的心理学草稿』を除く)、一言触れるに留めるが、彼は「観念」ではなく「表象」に定位し、それと「情動」の関連を重視したし、背後に脳内の生理学的過程を想定していた。