ボナパルティズム

続いてカール・マルクス『ルイ・ボナパルトブリュメール十八日』(伊藤新一・北条元一訳、岩波文庫)を検討するが、ボナパルティズムと現代を比較するとき、それは、代議制の危機であるだけでなく、金融貴族、(保守的な)分割地農民、ルンペン・プロレタリアートの問題である。

144ページ

「しかしそれでも国家権力は空中にうかんでいるのではない。ボナパルトは一階級を、しかもフランス社会のもっとも数の多い階級、分割地農民を代表している。」

それはコミュニケーションなど生活様式の問題として捉えられる。「かれらの生産方法は、かれらをたがいにむすびつけるかわりに、たがいに孤立させる」。また、145ページでは、かれらは議会に代表者を持たない(持てない)から誰かに代表されるしかない、と指摘されている。「革命的な農民ではなく保守的な農民」(146ページ)という切り分けはいささか都合が良すぎるが。

また、ボナパルトは「中間階級の代表」(154ページ)である。それは、現在は否定されているというか、反対論もあるが、ファシズムの主要な担い手は中間階級だった、という説を思い起こすべきであろう。次のようにもいわれている。「同時にボナパルトは、自分はブルジョアジーとは反対に農民と一般人民の代表者であるとこころえ、ブルジョア社会の内部で下層の人民階級を幸福にしてやろうと欲している。」

155ページでは、「ボナパルト一派のルンペン・プロレタリアートが金持にならなければならない」から「インチキ株操作」が必要だとも述べられている。

ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日 (岩波文庫 白 124-7)

ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日 (岩波文庫 白 124-7)