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橋本治という人の原光景を考えるときに、ごく初期の「ブルーベリー邪夢」とかいう小説ともエッセイともいえない奇妙な短い文章が参考になります。もともと少女漫画からのパラフレーズだと思います。その内容を要約すれば、同性愛の少年がいて年上の男性と付き合うけれども、その年上の男性には勇気を持って一歩踏み出すということがどうしてもできない、そのことにその少年が苛立つというようなことです。『桃尻娘』の連作の木川田君もそうだし、「ブルーベリー邪夢」の語り手の少年もそうですが、彼らのことを考えると、浅田彰が『逃走論』(ちくま文庫)でジュネから引用した「早くから情事を知った少年は生真面目です」という言葉を思い出します。その言葉の意味は、早くから情事を知った(同性愛の)少年は、いずれ自分の美や容色が衰えて性的な対象にならなくなるということがよく分かってしまう、というようなことだと思います。木川田君にしても、高校生だったのですから、早くから情事を知っていたといえるでしょう。そしてジュネが考えたのとはまた違った意味なのでしょうが、生真面目であったと思います。