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死の問題に戻りますと、別にマーラーは死にたかったというわけではありません。むしろ死ぬのがとても怖かったのです。なるほど死ぬのが怖い(なぜなら、死んでしまったらどうなるのか誰にも分からないのですから)というのはありふれているかもしれません。ただ、マーラーの怖がり方は人並み外れており異常であったということです。マーラーブルックナーの資質が全然違うということは彼らの作曲にも表現されています。マーラーの音楽には時々ものすごく俗っぽい、良くいえば「人間的」な感情が分かりやすく通俗的な旋律で表現されていたりします。『大地の歌』にしても問題は「現世の寂寥」であり「秋に消え逝く者」であり「告別」です。けれども私が聴く限り、ブルックナー交響曲にはそういう世俗的、人間的な要素が全然ありません。ただひたすら管弦楽が荘厳に響いているというだけです。或る人々にはそれが超絶的で悠然としているからすごいのだというふうに感じられます。でも私には退屈であるというだけのことです。