近況アップデート

どうして田邊元を高く評価したのかよく分かりませんが、恐らくハイデガー西田幾多郎の存在やその思想のことは知らなかったと思います。田邊元から西田先生という人がいるという話くらいは聞いていたかもしれませんが、西田幾多郎の著作の欧米の言語への翻訳は当時まったくなかったし、西田幾多郎自身がドイツに行くということもなかったので、彼の存在が知られることはなかったと思います。三木清のような人はドイツに留学してハイデガーに学び、当時『存在と時間』は公刊されていなかったと思いますが、その方法論を応用して『パスカルに於ける人間の研究』を書いたわけです。しかし、ハイデガーはそれをどう思ったでしょうか。サルトルの「ヒューマニズム」を批判したハイデガーが、三木清の哲学的人間学の構想を受け入れたとは到底思えません。

三木清には、『帝国の形而上学』だというような批判があり、なるほど彼と当時の政治状況との関わりは微妙です。彼は一時マルクス主義に接近しますが、その後の政治的な行動というのはよく分かりません。ただ、三木清がどうであったのかというのははっきりしませんが、最終的に彼が軍部から危険人物と看做されて投獄され、戸坂潤とともに獄死してしまったというのは事実です。