柴山雅俊『解離の構造 私の変容と〈むすび〉の治療論』岩崎学術出版社、p.236.
断片化した魂同士がむすばれるためには、それらが互いに包まれることが必要である。犠牲者としての交代人格は外傷の記憶をひとりで抱え込んでいた。すでに述べたように、生存者は切り離されていた犠牲者人格を包み返す必要がある。つながるとはそこでしっかりとしたやりとりがなされることである。症例アザミのところで述べたように、交代人格に「ミアンゲ」を与えることによって、傷ついた記憶が流れ込んでくる。犠牲者人格を包みつつ、それとしっかりつながることによって、魂の断片同士はむすばれていく。
解離性障害の治療において重要なことはたんに一つの人格にすることではない。必要なことはそれぞれの魂が「包まれる」とともに「つながり」を回復していく過程であり、それによって〈むすび〉すなわち生成する生命の力を奮い立たせることにある。
柴山雅俊『解離の構造 私の変容と〈むすび〉の治療論』岩崎学術出版社、p.236.
- 作者: 柴山雅俊
- 出版社/メーカー: 岩崎学術出版社
- 発売日: 2010/10/05
- メディア: 単行本
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