随想

僕はそのことについて、西垣通『IT革命』(岩波新書)の意見を支持する。ネチズン(ネット市民)、ネット民主主義は成立困難なのである。もっと申し上げれば、そもそも市民及び民主主義がまともに成り立つことが非常に困難だ。ということは、我々の社会や日常を観察すればすぐに分かると思うが、対話や議論、交流といっても、それが生産的にならない場合が多いからである。そして、ネットもそういう社会的現実の反映というか、それ自体社会的現実の一部でしかない。だから、インターネット黎明期に人々が夢見た、ネチズンによって構成されるネット民主主義などはあり得ないが、従って東浩紀(『一般意志2.0』)などは対話や合意を抜きにした無意識的自動計算のネット民主主義を構想しているが、そういうものもナンセンスなユートピアだと申し上げるよりほかはない。

IT革命―ネット社会のゆくえ (岩波新書)

IT革命―ネット社会のゆくえ (岩波新書)