ルーファス

《ルーファス》、というのは、アメリカの黒人で同性愛者の作家、ジェイムズ・ボールドウィンの『もうひとつの国』という長篇小説の主人公だが、私が彼のことをずっと考えていたのは、端的に日比谷公園が寒かったからだった。季節はもう秋である。軽装でやって来ていた私には秋風が冷たかったのである。

私は『もうひとつの国』、『ジョヴァンニの部屋』くらいは読んでいるが、『もうひとつの国』の構成や内容はいまいち詳しく想い出せない。私は、中上健次『破壊せよ、とアイラーは言った』(集英社文庫)で死んだルーファスが呼び掛けられている、ということを特に憶えていたのだった。そして、それはただそれだけの話である。

ジョヴァンニの部屋 (白水Uブックス (57))

ジョヴァンニの部屋 (白水Uブックス (57))

破壊せよ,とアイラーは言った (1979年)

破壊せよ,とアイラーは言った (1979年)