政治とマーケティング、続き。選挙に行こう!という運動について。

昔Chance!周辺の人々が、「選ぶ楽しみ落とす楽しみ」という投票率を上げる運動をやっていた。それはそれで結構なことだと思うが、みんなが選挙に行っても自民党に投票するならば無意味で逆効果である。それは暗黙に、革新政党に投票して欲しいという要請なのである。

実際、投票率の上昇とか、熟議・熟考などの要素そのものは政策の選択や投票行動に直結していないが、一定の関係があるともいわれている。熟議民主主義を論じた本によれば、熟議の前よりも後のほうが、排外主義的な意見の支持者が減少し、リベラルな意見の支持者が増えたそうである。そうすると、投票率を上げるとか、熟議、まともな話し合いの機会を増やすことには一定の意味はあるだろう。

さて、リアルにいえば、この両者を並べるのはフェアではないが、共産党公明党には組織票がある。共産党を熱心に応援する党員とか『赤旗』購読者などの分厚い層があるのである。また、創価学会という巨大な宗教組織が公明党を支援している。

ということは、投票率が低ければ、共産党のことはともかく、公明党には有利なのである。なぜならば、みんなが怠けて投票に行かなくても、創価学会の信者は必ず選挙に行き、公明党の候補者に投票するからである。

投票率が上がれば上がるほど、それまで態度を決めていなかった人達、無党派層とか浮動票と呼ばれるものが重要になってくる。野田佳彦が『民主の敵』で、「浮動票は努力によって不動票になる」と書いていたが、確かにそういう側面はある。まだ最終的な態度を決めていないということは、説得の余地があるということでもあるからだ。

もう少し考察を続ければ、労働組合に組織されている労働者達の票は、共産党社民党民主党に行く。企業経営者、自営業者、農民などは自民党を支持するケースが多かったが、自民党新自由主義寄りに変わって以降、少なくとも農協はTPP反対など自民党とは異なる政策を支持・主張し始めたし、自営業者の利害も自民党の政策によってはそれほど実現されなくなったはずである。それは日本社会におけるそれらの没落、切り捨てがほぼ完了したことも意味している。また、自らの実力だけで這い上がってきたと自負する中小・零細企業経営者に小沢一郎と彼の政党を支持する人々が多いと森田実は言っているが、私自身は統計を取ったわけでもなく、はっきりとは分からない。ただ、これまでの保守政党の政治には不満だが、社・共などの革新政党、左翼も支持したくない結構な数の人々がいるということだけは承知している。ひょっとしたらみどりの党がそういう人々の不満の受け皿になるかもしれない。

話を戻せば、選挙に行こうとか投票率をアップしようというのは、それだけではただ単に形式的な条件でしかない、というのが私が申し上げたかったことだ。みんなが選挙に行って具体的にどういう選択をするのか、どういう投票行動をするのかということが重要だし、恐らく大事なのはそれだけではない。最終的には、野田佳彦(私は彼を好まないが)がいうような地道な努力以外にないのだが、さて、どうなるのか、ということであろう。

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