『解離の構造 私の変容と〈むすび〉の治療論』岩崎学術出版社、p.222-223.

エリの恐怖は壮絶なもので、最近彼女と会ったとき、彼女はバラバラの死体だらけの薄暗い家に住んでいました。私が(背後空間に)引っ込んでいる時、たまにこのバラバラ死体だらけの部屋に迷い込みます。人間の血だらけのパーツだけが落ちている身の毛もよだつような暗い光景です。血の匂いが忘れられません。彼女は家の外に出ると透明で周りには見えないそうで、その家しか居場所がないんです。バラバラ死体の家の中で誰ともコミュニケーションをとれないので、本当にひとりぼっちです。私が一緒に行動しているとき、彼女の広い家の中では私のほうが半透明で彼女はクッキリしています。家の中では、感触はハッキリしていて、ドロッとした生温かい血の固まりが降ってきたり、ぐちゃぐちゃになった頭が転がってきたり……あそこは恐怖のかたまりです。不思議なことに、家の中には神社があります。その神社にお参りに行ったことがありますが、そこでお参りすると、さらに頭からバラバラになった頭が降ってきたり、新たに死体が増えているのです……。気持ちの悪いお話ですみません。ただ、彼女は酷い場所に住んでいて、あんな場所ではまともな思考回路は働きません。

柴山雅俊『解離の構造 私の変容と〈むすび〉の治療論』岩崎学術出版社、p.222-223.