西部忠の言説

僕は、西部忠の文章でLETSというものを初めて知った。で、面白いけれど、マイケル・リントンのホームページなどを読んで、こんな素朴?な貨幣論で大丈夫なのかな、と疑問も抱いたりしていた。その後、西部忠とはNAMでQプロジェクトを一緒にやることになる。

西部忠と彼に触発されていた時期の柄谷行人の言説の特徴は、multi-LETSを多数多様体の実現と看做しているということだ。ドゥルーズ=ガタリの言説ではあくまで潜在的な理念であるところの多数多様体が、多元帰属という具体的な制度に現実化される、というのは僕には魅力的だった。

が、実際にやってみると、手続きの煩瑣さが予想を超えた。膨大な数のMLを管理する手間は相当なものだったし、LETSにせよ複数のそれを管理運営する余裕など到底なかった。今はCCSPがあるから、MLを立ち上げるのと同じくらい簡単にオンラインLETSを立ち上げることができるが、Windsしかなかった頃にはそんな事態は想像もできなかった。