国家「主権」と「合法的」に独占される暴力の問題

例えばカントは戦争を「自然の狡知」と考え、ヘーゲルは「理性の狡知」と考えた。いずれも、人間本性から戦争の不可避性を導く議論である。

現在、戦争が問われ、それに反対する思考や行動が提起されているのは、近代以降の基本的な構えへのラディカルな問い直しが契機である。ダグラス・ラミスもそうだが、「ホッブスの実験」、即ち国家主権のみが合法的に暴力を独占するという実験が厖大な殺戮という結果をもって終わったことへの根本的な反省があるのだ。そこから、ありとあらゆる国家主権、戦争行為への批判が生まれる。

現在、戦争を肯定する論理は、シニシズム以外にない。それは典型的には、日本は北朝鮮「問題」を抱えているのでアメリカに追従しイラク戦争も肯定するしかない、といった屁理屈である。それは倫理的に破綻しているのみならず、戦略的にも誤りである。