天皇陛下の経済学/作り上げた利害

午後から両親を船橋二和病院の定期の受診に連れて行き、待合室でB・A・シロニー(ヘブライ大学助教授)『天皇陛下の経済学 日本の繁栄を支える“神聖装置”』(山本七平監訳、光文社文庫)を読む。

別にからかってネタにするためにだけ読んでいるわけではないのだが、ツッコミどころとしては、「反体制派の大物は九州、四国、中国からでる」という項目に挙げられている左右の様々な人士の最後になぜか「井上清(高知)」・・・。はて。そうして「ファシスト外山恒一のことを誰でも思い浮かべるだろう。

そうして著者および訳者の「右寄り」とも思える視点が、巧まずして奇妙なかたちで屈折したくだりとしては、「天皇と国家と道徳の根源を一体化する“国体”という言葉は、1945年まで家族国家としての天皇と国民との神聖な結合を意味していたが、それもまた連合国軍最高司令官の指揮下に置かれたことで、威信を失い、今では単なる国民体育大会の略語にすぎなくなった。」(198ページ)

・・・いやはや。おっしゃりたいことはなんとなくわかるが・・・

天皇裕仁ノーベル平和賞を」というのは「憲法九条にノーベル平和賞を」という最近のアレを思わせてじつに微笑ましい。

そうはいっても、著者は日本の天皇制の“万世一系”の素晴らしさを礼讃しようとして、「理由は簡単だ。神武天皇のような神話中の人物は別として、日本には、天皇家が始まって以来、玉座についた人物に、傑出した才気煥発な人物はほとんどいなかったからである。」とホメてるのか貶してるのかわけのわからぬ一文を書き込んだりもしている。

それからもう一冊ベナベンテ『作り上げた利害』(永田寛定訳、岩波文庫)も読んだが、ノーベル賞作家ということだがこの人知らなかった。