ハリー・ボッテーとトンチキてつがくの冒険

【壱】
ハリー・ボッテー「ボクの新しい本を読んで下さい!」
わたす「なんて本なんだい?」
ハリー・ボッテー「えっと、『支払え、そのバカ高い代償を』ってゆいます」
わたす「……」
ハリー・ボッテー「ですから、不勉強なヤツは痛い思いをしてその代償を……」

わたす「アホか?」
ハリー・ボッテー「は?」
わたす「だから、アホかと言ってるんだ。そんなクソ下らない面白くもないもんを一体誰が買うんだよ?」

ハリー・ボッテー「どうもすいまそん。ボクがバカでした。いえ、現在進行形でバカです。どうか、ゆるしてくらはい」

わたす「いや、許さない」

ハリー・ボッテー「は? あの、それはなんですか?」

わたす「何に見える?(ずぎゅん)」

ハリー・ボッテー「ふはぎゃ。……あ、あくま……」

わたす「それ褒め言葉だよな?(ずぎゅん、ずぎゅん)」

「ぜっつ・めいと

【弐】
ハリー・ボッテー「ボクの新著を読んで下さい!」
わたす「またお前かよ? 今度は何て本なんだ?」
ハリー・ボッテー「『切り取れ、そのおっ勃ったチンポを』」

わたす「買った(即答)」

ハリー・ボッテー「は?」

わたす「は?も何もねえだろ。傲慢な消費者様の前にヘイコラ這いつくばらねえのか?」
ハリー・ボッテー「どうして、そんなことを……」

わたす「お客様は神様ですってゆうじゃないか。逆だぞ。神様がお客様なんだ。わかったら、ホラ、這いつくばっておれの靴の底でも舐めてみろ。わかったか? この曲学阿世。てめえみたいなのには焚書坑儒が本当だ。この腐儒。ゴミクズ野郎が」

【参】
「いやはや、よくこれだけ悪意的な連想が次から次に湧いてきますね?」
「ハッハッハッ、それほどでも」
「そのことだけには感心しますよ」
「そんなに褒めるなよ? くすぐったいじゃないか」
「ホント、そのことだけには」
「ハッハッハッハッ」
「あの、アホですか?」
「一言多いって言われないか?」

「ハッハッハッハッ」
「ハッハッハッハッ」

【死】
「あのさ。金子光晴が晩年の『そろそろ近いおれの死に』で書いてたみたいにさ」
「ふむ」
「孤独なんて脂下がってるヤツは大抵、女にちやほやされてモテたいだけの助平。痴漢だよ」
「ふむふむ」
「そうして、モテたい相手は女だけとは限らない。男である場合もある」
「ふむふむ」
「男と女と両方である場合もある」
「ふむ」
「それからさらに……」
「もういいよ?」
「ま、とにかく人間ってのは複雑なのさ」
「わかったから……」
「わかってもらえて嬉しいよ?」
「……人間が複雑なのはわかったが、なんか話が大幅に逸れたような気がする」

「気のせいだろ」

「えっ」