『海辺の光景』

昨晩は橋本一子トリオの"Miles Blend"を聴きながら就寝。ベースは井野信義、ドラムスは藤本敦夫。2001年録音とのこと。今朝は6時前に起床。リヴァーサイド・レーベルのケニー・ドリュー・トリオ『パル・ジョーイ』から第7曲目に当たる「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」を聴く。ベースはウィルバー・ウェア、ドラムスはフィリー・ジョー・ジョーンズで録音は1957年である。400字詰め原稿用紙1枚に思いつくままに文章を書き、安岡章太郎『海辺の光景』(新潮文庫)の表題作を少し読む。これが何年に書かれたものか興味があるが、それはこの文庫本の平野謙による解説には記されていない。本当に冒頭数ページしか読んでいないわけだが、気になったのは次の箇所である。《……突然、腐った魚のハラワタの煮える臭いが鼻を撲った。車のすぐ前をケタタマしい叫びを上げて、トサカまで真白くほこりを浴びたニワトリが何羽も横切った。粗末な、板片を打ちつけただけの家が、倒れそうになりながら軒をくっつけあって立っている。「部落民」と呼ばれる人たちの居住区だ。この部落がつきると、道路は平坦になり、やがて二た股になって分かれる。》(9ページ)ーー安岡章太郎は後年、70年代以降だったか、差別問題を取り上げたそうだが、主題的に取り上げたということでなくても初期に既に関心の萌芽があったのだろうか、と思った。