マニアック #5

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 マニアック #5
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■発行遅延のお詫びと今日の一言

私の意見は暗い。
渡辺貞夫リサイタル(Sadao Watanabe Ricital)』を聴いている。
これは実に素晴らしい。

私は過去を思い返していた。大学時代のこと。1994年から98年である。
また、大学院。2000年まで。
その間に描いたイラストや集めた資料などを整理していた。
そして、自分は以来進歩がないのだと思った。

喪ったものだったら沢山ある。例えば、もう絵を描くことはできない。
少なくとも自由に描くことはできない。
語学力も衰える一方である。日常で使う場面がないからだ。
そういうわけで、私は、「あらゆる生は崩壊の過程である」という
フィッツジェラルドの言葉を想い出す。
ドゥルーズが『意味の論理学』で引用していた印象的なフレーズである。
我々は多くを失うし、喪ったものを再び得ることも多くない。
ただまあ、数十年掛けて継続し推進することも何かあるでしょう、とは思う。
年々、多数の音楽を聴き、本を読む。
新譜や新刊も含むから、2000年の段階では不可能なことである。
また、自分自身のあれこれについても模索を重ねる。
満足が行く結果に到達することはないのだとしても……。

例えば、思考であるとか認識、理解。文章を書くなどの言語表現。
楽器の演奏。
それらにおいて自分が「進歩」しているという実感はない。
それはないが、とにかく継続しているのだ、ということである。
「継続は力なり」とも云うが、それについても実感はない。
「継続は力なり」ということで、私は、ベーコンの「知は力なり」を想い出す。
だが、継続であれ知であれ、果たしてそれは力なのだろうか。

というような実にどうでもいいことばかり考えて暮らしているのである。

……どうでもいいことばかり考えている、ということだけではしょうがないだろうが。
そういえば、最近、神沢敦子さんにお会いした。
彼女は大学のサークルの先輩の奥さんだが、不思議なことに、昔と全く変わらないのだ。
私は本当に驚いた。人間の年齢。その営み……などについて暫く考えてみた。

恐らく、人間は変わらない。
人間本性 human natureとか性格 characterといわれる根っこは不変だと思う。
それはそうだが、夭折しなかったとすれば、「その後の人生」はあるわけである。
もはや若くなく、壮年、中年、そして老年……。
そうなったときに、何を考え、また、為せばいいのだろうか。
ということをふと考えた。

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マニアック
編集:攝津正
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