短歌を作る早朝

ホロヴィッツ聴き続けても深夜迄グランドピアノを見詰めているか
夜が明けて人々を見るネットでも何をしようと眺めるだけか
晩年のフランツ・リストの音楽に流れる雲の果敢なさを見る
歳月がただ過ぎていく感じさえ既に慣れれば身近なものか
夢も見ず眠り込むなら自室にてくすむ心に音楽もなく
写生さえ難しいから言葉だけ弄ってみても何も生まれず
動物を飼いたい望みも叶わずに両親とのみ暮らしてばかり
年老いた母の歩みに追い付かず二和の街で息もつけない
中年の己の歳に驚いて若い人らの活躍を見る
生活がただ空っぽで何もなく詠むべきものも何もないのだ
腰の奥鈍い痛みを感じてもどうにもできず放置するのみ
小説も書く力なく投げ出してただ漠然とネットを見ている
そのうちになるようにさえなればいいただそれだけを思い描くか
九州の山の自然を思い出し猿は猿ゆえ人にはなれぬ
日本史の遥か昔を思い見て万葉人の調べに憧れる
何事も為せばなるのかそれだけか何もせずとも時なら過ぎる
日本茶を飲むだけの日々過ごしても面白くなく誰にも会わず
短歌さえ詠む面倒に堪えかねて韻律もない文字を連ねる
ウェッブサイト作り掛けても放置して数年が過ぎ消去されるか
研究を辞めたことなら良かったが暇潰しにはすることがなし
大学を離れてみても遥かなる資本主義には手が届かぬか
過去にいる女友達忘れても人妻になる彼女らはよし
日本語を調べてみてもいつまでも歌の調べは拙く弱し
誰にでも噛み付いている犬だから保健所などで屠殺されるか
人々の命を奪う私ゆえ憎まれようと平気の平左