いーぐる掲示板への投稿:互盛央

互盛央『フェルディナン・ド・ソシュール言語学〉の孤独、「一般言語学」の夢』(作品社)、15年以上掛けて書かれた浩瀚な書物ですが、著者は専門の言語学者ではなく編集者だそうです。あれこれ目配りの利いた良書と思いますが、どうもデリダ的な視点から考えられているようです。彼はローマン・ヤコブソンやレヴィ=ストロースに批判的です。例えば、p.355。

「そのありようが、右の一節で「相対的単位」と呼ばれるものにほかならない。「相対的単位に現れる差異」は、より大きなまとまりの中で結合される。それをソシュールは「集約(groupement)」と呼ぶ。集約がなされるからこそ、相対的単位は発生しうる。したがって、集約によるまとまりは、相対的単位が発生する可能性の条件をなす。あるいは、そのまとまりは相対的単位が発生する場所である。そのことを見逃すなら、「差異が意義を生み、意義が差異を生む」という説明は単なる循環でしかないし、それを回避しようと思うなら、すぐに音素が持ち出されるだろう。そこに口を開けているのは、ローマン・ヤコブソンやクロード・レヴィ=ストロースが落ちた陥穽にほかならない。」