近況アップデート

けれども私は橋本治に現実的な認識がなかったと言いたいわけではありません。そうではないと思います。彼は『桃尻娘』という連作小説を書きました。私は傑作だと思います。そのなかに木川田君というゲイの若い人(高校生だと思います)が出てきます。連作が完結したときに、橋本治は著者後書きで、自分が創造した作中人物達と対話しました。木川田君とも対話しました。そこで橋本治がいっていたのはこういうことです。普通木川田君のような人には未来というものがないので、木川田君は未来というものを得るために頑張らなければならなかったというようなことです。なるほど私もそうであったと思います。それはこういうことです。木川田君は高校生ですが、ませた子供です。当時インターネットはありませんでしたが、同性愛の雑誌に投稿したりして相手を見付けては適当にセックスをし、享楽的に生活しています。でもそれだけです。木川田君は最初それ以外何もしません。橋本治にはそのようなタイプの人には通常、未来というものがないということがよく洞察できていたのです。