『私自身であろうとする衝動』の第一印象、または直感

倉数さんは有島武郎などを丁寧に読み解いていく。
彼の語る「美的アナキズム」の特質である、「私自身であろうとする衝動」という言葉も、有島の『惜みなく愛は奪う』からの引用だそうである。私は、同書を読んでも、「なんじゃこりゃ?」としか思わなかった鈍物であるから、彼我の文学的感受性の差異は歴然としている。
ただ生きているだけ、なんの支えもない、というのは、どんな「現代思想」チックな言葉で飾ろうと、現代人の根本的な不幸だろう。私もまた、その不幸を生きている無数のjunkのなかの一人である。

惜みなく愛は奪う―有島武郎評論集 (新潮文庫)

惜みなく愛は奪う―有島武郎評論集 (新潮文庫)