36歳

36歳という自分の年齢を強く意識する。こんなに歳を取ってしまったのだ。私はもう、年寄りだ。性機能障害もパキシル摂取のせいばかりではあるまい。加齢で、枯れてきているのだ。当たり前だが、もう青春というような若さはどこにもない。自分は明瞭に中年である。
そしてこの年齢で、代表作の一つもないという事実に愕然とする。哲学論文、小説、音楽(ジャズピアノや津軽三味線の演奏)、どれを取っても決定的なものはない。つまり自分は、「世に出て」いないわけだ。今後世に出る可能性も低い。つまり、二和向台のひきこもりとして余生を過ごすよりほかないわけだ。これは絶望的なことだが、案外気楽でもある。『人間失格』や『天人五衰』のラストを想起する。「選ばれなかった者」にも余生はあるのだ。私のような駄目人間でも、それでも殺されぬ限りは生きているのである。実に当たり前のことながら。
自分は何ら価値を生産せず(労働せず)、意味もなく生きている。そのことを辛いと思う時もあれば、却って気楽だと思う時もある。ともあれ意味があろうとなかろうと、自分は演奏を続けるし、文章も綴っていきたい。