ファウスト

以下引用。「なんてことだ。哲学をやった、法学も医学もやった。おまけに神学なんぞも究めようとした。しゃかりきになってやってきた。ところがどうだ。いぜんとしてこのとおりの哀れなバカときている。ちっとも利口になっちゃあいない。おもえば修士だの博士だのと称して、もうかれこれ十年来、学生どもの鼻づらを縦よこ十文字にひきまわしてきた──。あげくのはてにわかったのは、要するに何ひとつ知ることはできないってこと。それを思うと、いてもたってもいられない。」(ゲーテファウスト 第一部』(池内紀訳、集英社)p25