芸術とは何の謂いか?
いーぐる後藤雅洋さん(id:eaglegoto)、いーぐるnote2010(http://8241.teacup.com/unamas/bbs?)にて記:
感想 投稿者:後藤雅洋 投稿日:2010年11月16日(火)09時19分59秒
芸術ダーウィニズムについてよく知らないので、単なる感想ですが、現在流通している「芸術」という概念自体を精査するほうが先決ではないかと・・・というのも、人によってこの言葉がイメージする内容にかなり違いがあるように思えるのです。また、仮に芸術概念が変容したとしても、より一般的な概念である「美」や「感動」や「快」といったものは、「芸術概念とは独立して」存続する可能性だってあるように思えるのです。
でも、「美」もまた、すでに変容していますか・・・変わらないのは「快」だけかな。
議論する際に必要なのは…
- 自分と相手で共有している諸前提があるか、ないかを吟味する。
- ある場合、その諸前提なり諸条件が妥当かどうかを吟味する。
このことですよね。
なので、「芸術」という概念自体を精査するという御提案に賛成です。
哲学史的には、カント(『判断力批判』)、ヘーゲル(『美学講義』)、ハイデガー(『芸術作品の根源』)、アドルノ(『美の理論』『音楽社会学』)を踏まえねばならないでしょうが、そう敷居を高くしてもアレですよね。
そういえば鶴見俊輔の『限界芸術論』というのもありましたね。岡崎乾二郎さんの勧めで以前読んだのですが、今は忘れていますが。
とりあえず【芸術性と商業性の相克】【芸術性/商業性という二項対立そのものの閉域性とその外部】みたいな話をしたいと思います。
わたしの考えでは、芸術作品というのは、いわゆる商品ではないが、何らかの価値(芸術的価値)を有するもの、だと思います。岡崎さんのように【売れ残りの商品】と言ってもいいかもしれません。或いは【廃物】とも。
芸術性と商業性は、相克する場合もあれば、相補的である場合もある。例えばベートーヴェンが貴族パトロンから自由になり、市民芸術家として自立できたのは、そうできるだけの経済的基盤があったからでした。というようなことを考えると、頭から商業性を全面否定する議論には、疑問符が付く。
しかし、いーぐる掲示板でもこのブログでも繰り返し書いているように、資本主義的市場が芸術作品の価値を決めるとも思われない。セロニアス・モンクやセシル・テイラーの例を出すまでもなく、売れなくても価値があるものは確実に存在する。
他方、オスカー・ピーターソンのように、資本主義的市場にも適応的でありつつ、芸術的な価値を持っているといえるものもある。
以前岡崎さんが話してくれた話ですが(脱線ですいません)、彼がスティーヴ・レイシーのライヴに行ったら、その晩はレイシーの家族、友人等関係者も含め岡崎さん当人も含め3人しか客がいなかった。しかし、その演奏は素晴らしいものだった、ということです。
ジャズメン、特にフリージャズの人は喰えない場合が多い。しかし、それはその芸術的営為が無価値だということではありません。
パンクロックのようなものはどうか? noizさんが書いていたように、商業性も芸術性も眼中になく、やりたいという原初衝動のみでやっている、という場合もある。そして、それを芸術とカテゴライズするかどうかは別にして、その営みには意味なり価値がある、とわたしは思う。だけれども、この場合、その意味なり価値をどう語ればいいのか?
或いは(フリージャズやパンクロックとは真逆ですが)上原ひろみのような場合はどう捉えればいいのか? 彼女は売れているし、確かな演奏技術も持っている。しかし、いわゆるジャズの伝統とは(意識的に)ずれた場所に身を置いているようだ。よく言われることですが、彼女と共演しているギタリストの奏でる音は、いわゆるジャズとは少し趣が違っていますよね。しかし、それでも、彼女の演奏は、何らかの芸術的価値も商業的価値も持っていると思える。
結論は出ないですが、いろいろな事例を検討するしかない、と思います。
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