すが秀実 / 菅原正樹 / 大西巨人 / 鎌田哲哉

私は文学には畏敬の念を抱いている。作家志望と言いつつ、自分の文章では文学として駄目だ、と思いもする。
そのようなことを、菅原正樹の小説を読んで思い出した。
まず読んだのは、菅原正樹『書かれるべきでない小説のためのエピローグ』(新風舎、1400円)。これに驚き、菅原正樹(SUGAWARA SEIKIと読む)『曖昧な時節のさなかで』(近代文藝社、2000円)を取り出すが、これも凄い。
隣りにあったので、大西巨人(聞き手・鎌田哲哉)『未完結の問い』(作品社、2600円)を読み始めるが、圧倒される。

大西巨人を除き、他の三人はQ-NAMで関係があった。
太田出版地下で、NAMは読書会をやっていたが、その講師にすが秀実がやってきた。だが、どういうわけか、すが秀実は、NAMに否定的なことばかり言う。その時は知らず後で知ったのだが、すが秀実は自発的にNAM原理に賛同してNAMに入ったわけではなく、柄谷行人に「NAMに入れ」と強制されてNAMに入ったのだという。だから否定的言辞も当然だったのだが、私は激昂し、その場ですが秀実を怒鳴った。あなたはNAMは何も運動していないと言うが、批評空間社があるではないか、と。その時、初めて会合に来て、とりなしてくれたのが、菅原正樹であった。2000年前後のことと思う。
その後、彼とはNAM、Q、RAMで一緒に活動した。その当時から、彼が小説を書き、且つ植木職人であると知っていたので、著書は持ってはいた。しかしどういうわけか、2010年の今日に至るまで読まなかった、いや正確にいえば読めなかったのである。理由はよく分からぬ。
私は、菅原正樹の文学者、小説家としての才能と誠実さを確信する。だが、NAM解散後、彼がwebに(私をモデルにして?)連載した『境界霊』に関しては、正直失敗作だと思う。大西巨人のインタビューでいえば、NAMなり私をモデルにしたのであれば、「凡庸な悪」を描くべきだったのではないかと思える。
『未完結の問い』も、出た当時、鎌田哲哉から贈っていただいたものだが、当時の私は碌に読みもせず拒絶してしまった。同性愛に差別的という理由でである。言葉尻を掴まえて、相手を全面否定するのはフェアな態度ではない。だが私は、短気に過ぎたのである。今、読んでいるが、素晴らしいと思う。

未完結の問い

未完結の問い