NAMsに送付してみた。

総括というほどのものではないですが、現時点での考えを送ります。
今はなくしてしまった独房QというMLを作ったとき、王寺さんから、Qの楽しかった思い出なども総括してほしいと言われたのを覚えていますが、それはなかなかできませんでした。しかし、基本的には、私の経験したかぎり、Q-NAMは楽しかったのです。思い返してみると、それは若い独身者の運動という感じがしました。NAMが解散して、各人が自分の力量で生きていかねばならなくなり、多くの人は就職し結婚し子供をもうけたように思います。倉数さんや田口さんなど。
かつてのあの楽しさを取り戻すことはもうできないし、それを望むべきでもないのでしょうが、蛭田さんのイモケンで過ごした日々のことを懐かしく思い出します。

寄稿します。

NAM解散から7年もの歳月が経ち、明らかになったのは、NAM総体が無意味であったということだ。
NAMはマルクス資本論』のテクストの曲解に基づき、現実的に意味のない理論と実践に終始した。それは最初から最後までそうだったし、解散後の元NAM会員のプロジェクトについてもいえる。

具体的にいえば、地域通貨である。NAMの核心はLETSだったが、Qプロジェクトの実践を通じてそれに意味がないことがわかった。
Qの根本的な問題をいえば、大学の研究室や企業のプロジェクトチームでなく、NAMのボランティア実働に頼ったことが挙げられる。それでいて、国民通貨=円へのオルタナティブを夢想していたのだから、恐れ入る。
Qを巡って生じてきたもろもろの問題、例えばプログラマー、開発者の穂積一平のストレスの蓄積と怒りの爆発や、本人確認などの実務を担う登記班(渡辺彰吾、西原ミミ、茨木彩、後藤学)の疲弊などは全て、NAMボランティア実働がオルタナティブ貨幣の信用を担保しようとしたというところから発している。そこにQの無理があり、ひいてはNAMの無理があった。

そもそもネットコミュニティ通貨、オルタナティブ貨幣が資本主義への対抗運動に必要、有用なのかどうか疑問だが、仮にそれらが必要であるとしても、幾つかの前提条件をクリアしなければ流通しないように思う。

条件の一つは、電子マネーなど通貨の仮想化の進行である。地域通貨といっても、地域通貨だけの決済は少なく、多くは国民通貨との併用なのだから、国民通貨のほうがインターネットやカードで支払えるようになっていなければならない。
二つ目は、カードなりで円と一緒に決済できる技術の確立である。ちょっと考えてみてもわかると思うが、商店街で買い物することを考えてみて、買い物の円部分だけその場で支払い、地域通貨部分は帰宅してパソコンで決済するというのは煩瑣であり実用的ではない。インターネットショッピング等を例外として、基本的にカード決済できる仕組みが必要だと思う。
三つ目は、国家や資本との連携である。具体的にいえば、インターネット銀行やAmazon楽天はてなYoutubemixiTwitterその他との連携である。Qの紛争のとき、ネットバンク寄生論が代表の西部忠から唱えられ、登記班の強い反対で否定されたが、仮にネットバンク寄生論が通っていたら、登記の実働はなくなり、ネットバンクの決済と地域通貨決済が双方同時にできるようになっていたかもしれなかった。歴史に「もし」は禁物だが。

宮地剛が、Q(multi-LETS楽天構想を打ち出していたが、Q独自に自前の楽天を作るという発想が良くなかった。むしろ既成の楽天等にネットコミュニティ通貨を導入してもらうよう交渉すべきだった。勿論それには、資本制企業として利得がなければならない。また、その道を歩むことは、共産主義から遠く離れることであろう。だが、地域通貨であれ企業通貨(ポイントカード等)であれ、流通しようと思えば資本主義(資本制企業)に寄り添うしかないのだ。それは資本主義を促進する範囲で、拡大するだろうし、資本主義の脅威になるほどにはならないだろう。それは自明である。だが、現実的に考えるとそうならざるを得ないのである。

福西広和のように、国家(行政)などに支援される地域通貨に激烈に否定感を表明する者がNAMにはいた。しかし、国家にも資本にも頼らず自前で開発、運営しようとしたところにQひいてはNAMの隘路があったのだと見切れば、国家や資本を利用しつつ生き延びる道しかないことは自明だろう。逆に資本なり産業と密接に連携していければ、地域通貨に生きる道もあるだろうということだ。
Qについて、産業連関内包説ということが言われた。だが、山城むつみがQの取引を分析して結論づけたように、Qは資本主義のマージナルな部分でしか流通していなかった。私の言い方でいえば、それは「温箱的」なありようである。オルタナティブだが、高度化した資本主義の実情を理解していない。個人と個人の物々交換の延長線上には、いつまでたっても市場はできない。とすれば、銀行、企業、商店等から始めるべきだ。その意味で、Lの着眼点は正しかった。実行が伴わなかったとしても。

ここで一旦送る。