エノアール・カフェを訪ねて

愉しいホームレス生活:あなたもホームレスになれる〜もし望むのなら

2006年8月31日(木)、代々木公園のエノアール村で生活している小川てつオさん──彼のことは、早稲田にあるフリースペースあかねの究極Q太郎さんからうかがっていた──から連絡があり、私の実家のカラオケ教室で使っている『歌謡曲のすべて』という歌詞本を持って、代々木公園に出向いた。小川てつオさんと市村美佐子さんは、美術家で、代々木公園に暮らしながら制作活動も続けている。前回エノアールカフェにうかがった時は、フランス人アーティストのジェラールさんの展覧会「ハローゴミ」をやっていた。

今日、エノアールでは、ホームレスのかたがたや友人・知人などが集まり、カラオケ大会と盆踊りがあったのだ。小川さんがレコードを掛け、皆がマイクを持って歌う。それはとても充実した、愉しくスローな交流の時間だった。

小川さんは、「悲惨」という先入観を持って見られがちなホームレス生活だが、そこには自由もあれば歓びも愉しみもあるのだという。実際、小川さんや市村さんは、とてもゆったりとした、愉しそうな生き方をしている。

私は、何年間も続けて、年間3万人以上が自殺しており、その多くが中高年の経済的事情による自死だという事実を想起せざるを得なかった。また、作家の雨宮処凛さんが最近精力的に取材しているが、派遣社員などで長時間働かされ過労自殺した人達も多い。生活苦を理由に自殺したり、過労死・過労自殺に追い込まれるまで奴隷のように働くのと、生活保護を受給したり野宿生活をしてでも生き延びるのとでは、どちらが幸せなのだろう。答えは自明である。「生きることは善い」のだ。多くの人達は、プライドがあるために、自分はそこまで落ちていない、と信じたがり、その結果、自分の窮境をさらにこじらせてしまう。精神科医デス見沢さんが言うように、「開き直る」こと、「神の如くにマイペース」を貫くことが精神衛生上最も大切なことだというのに、人間なかなか開き直れるものではない。かつての自分の社会的地位や収入に固執し、競争から降りるという選択肢を直視できないでいる。だが、死んでしまっては、取り返しがつかない。せめて、死を選ぶ前に、「ただ生きること」という私達の倫理上ほとんど唯一といってよい「善」を追求してみてはどうか。

小川さんと市村さんのブログは以下にある。追い詰められている、生きづらいと感じている人は是非、一読することを勧めたい。生きるための選択肢は実は豊富にあるのだ(プライドさえ捨てられるなら)、ということが実感できるはずである。

http://yukuri.exblog.jp/
http://bluetent.exblog.jp/