私は幸せ?

健康を取り戻し、仲の良い家族が健在で、好きな音楽を仕事にしている。私は一面からみると全くの落伍者だけれども、ある意味では幸せ者ではないだろうか。若い頃(十年くらい前)私は、自分自身や自分の音楽に否定的だったが、今はこれでいいんじゃないかと開き直っている。

大学ではフランス現代思想を学んだ。それはある意味虚しい、無意味なことだったけれども、他面では充実した良い経験だったと思う。一文にもならない不経済なことではあったけれど、世界最先端の思索に触れることができたのだから、良い経験をした。ドゥルーズという人の思考は、これから少しずつ解明されていくのだろうが、最先端の芸術と対話して、研ぎ澄まされた思想を紡いでいたのだと思う。『意味の論理学』と『アンチ・オイディプス』など「存在の一義性」「特異性」といった基本用語すら正確に訳されていない不幸な著書の新訳が出ることを、そしてシモンドンその他の多くの参考文献が邦訳されることを祈りたいと思う。