ミシェル・フーコー『わたしは花火師です』(中山元訳、ちくま学芸文庫)、p.11-12.

──そうしてあなたは、精神医学の世界に個人的にかかわってこられたのですね。
このかかわりは研修生時代だけのことではありません。個人的な生活においても、わたしは性にめざめた頃から、社会から排除されているという感覚をもちつづけてきました。捨てられているというのではないのですが、社会の影の部分に属していると感じてきたのです。自分がそういう存在だということを発見してみると、これは何とも衝撃的なことでした。この衝撃はたちまちに、いわば精神医学にかかわる危惧に変わったのです。お前はほかの人とは違っている。ということは、お前は異常者なのだ。異常者だということは、病人だということだ。ほかの人とは違っていること、正常ではないこと、病人であること、この三つのカテゴリーはきわめて異質なものでありながら、どれも同じように扱われていたのです。でもわたしは自分の生涯については語りたくはありません。興味深いことではありませんし。