町田康『告白』冒頭より

人間というものは不可思議なもので大事に慈しんで育てればよいかというと必ずしもそうではなく、「かしこいな。かしこいな」とちやほやすると、あほのくせに自分はかしこいと思い込む自信満々のあほとなって世間に迷惑を及ぼす。
ところが、「あほぼけかす」「ひょっと」「へげたれ」などと罵倒されて育つと、おのれの身の程を弁えるのと、なにくそ、と思う気持ちがちょうどよい具合にブレンドされて世間の役に立つ人間になる。

告白 (中公文庫)

告白 (中公文庫)