同性愛者とその影
ホモフォビアという用語がある。同性愛嫌悪とか同性関係嫌悪と訳されるが、フォビアとは恐怖症の意味であり、神経症的な強迫的な恐怖感情を指すと捉えるべきである。
というようなことを言おうと思ったのも、同性愛者、というか、正確にいえば異性愛者だと自分自身のことを信じて疑わない主体が抱く他者=同性愛者のイメージというものが、彼自身の影であり、彼自身の見られたくない恥部を他者、外部に投影したものであるからだ。だからそれは汚らわしく忌まわしく恐ろしいものであり、不気味なものなのだ。
で、同性愛者自身も、やはり影を持っている。それがどういう影かは分からないが。
「他者になる」ことで、同一者=自己たる主体の持つ構造的欠陥を逃れられるというわけではない。極端にいえば、同性愛者など存在しないのだ。「ゲイになる」不断の過程、外部への逃走があるだけだ。それは言い換えれば、神経症、恐怖症の治療をすることなのだ。
社会総体が、同性愛に関する(或いは別のものでもいい、何でもいいのだ)歪んだ、いびつなイメージを形成し、それに強迫的に怯えつつ生存しているという事実は、社会総体が神経症的なものであるから、それをほぐしていき、開いていき、治療しなければならぬという課題へと導く。
ギィ・オッカンガムが『ホモセクシュシュアルな欲望』で、問題なのは同性愛(者)ではなく、強制異性愛社会が抱く同性愛者のイメージであり同性愛嫌悪なのだと述べたのは、全く正しい。若書きの著作であったが、オッカンガムは正しく的を射ていた。
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「影」についてはこちらも参照。著者は『心のノート』で悪名高いが、良い仕事もしている。
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