私の意見

吉本隆明は『資本論』との類比で、芸術価値論をやったわけですが、わたしの個人的な意見としては、ジャズ(に限らず芸術作品一般)は「商品」ではないものとして、つまり『資本論』の価値法則では語れないものとして扱うべきではないかと思います。
岡崎乾二郎さんは、かつてエッセイで、芸術作品は常に既に「売れ残りの商品」なのだとし、その価値実現の「遅延」なり「ランダム性」を強調したのですが、岡崎さんの意図はよく分かりませんが、芸術作品は資本主義的市場のメカニズムとは別のところで、例えば目利きのコミュニティなどでその価値なり意味が決定されているように思います。つまり、素晴らしい芸術作品であっても、同時代には全く売れないとか評価されないということもあり得る。しかし、その価値を認知し承認する他者(コミュニティ)の介入がなければ、そのまま歴史に埋もれるでしょうが、介入があった場合、市場的には売れなくても後世に残る可能性はあると思います。いずれにせよ、芸術的な分野は、資本主義的市場の自由競争原理にだけ任せていればよいというわけにはいかぬと思います。