マルクス『資本論』の献辞
カール・マルクスが完成した自己の著作『資本論』第一巻を『種の起源』を書いた生物学者のチャールズ・ダーウィンに捧げようとして拒絶(辞退)されたという逸話は有名である。
反マルクス主義的なリベラル達は、ダーウィンがマルクスの主張を真正な科学と認めていなかった証拠だ、ダーウィンは正しかった、と言い募る。その意見が妥当かどうかの検討は措くとして、何故マルクスが自著をダーウィンに捧げようとしたのかを考えてみたい。
先程のエントリーで述べた通り、数千年に及ぶアリストテレス的本質概念を覆し、種が変異するものであることを明らかにしたのがダーウィンの進化論だった。とすればマルクスも、資本制(資本家的)生産様式が歴史・社会特定的であること、別の社会構成体から変異して生じた歴史的なものであり、そうである以上、いつかは別のものに変異していくものであることを言いたかったのではあるまいか。つまり、資本主義は永遠不動のイデアや本質ではないと。当たり前、自明のことのようだが、21世紀の我々もまた、19世紀のマルクスやダーウィン同様資本主義のうちにいる。勿論、その資本主義のありようや発展の度合いは大きく異なっているが。そうであるが故に、それの歴史性と可変性が見えなくなっているのではないだろうか。
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