『生きる』-24

倉数さんは攝津の家に遊びに来て、帰った後、『自虐の詩』という四コマ漫画を貸してくれた。数年経つが、それはいまだ攝津の書棚にある。倉数さんは攝津の自虐構造を察知し、それに適当な物を貸し与えてくれたのである。また、倉数さんは攝津をモデルにした愚かな人が出てくる小説を書いた。面白い小説だったが、それが入っていたパソコンがクラッシュしたので、今は読む事が出来ない。太田出版の地下室で初対面の時から、倉数さんは攝津の事を変な人だと直感していたという。何故かは知らないが。攝津のほうの倉数さんの第一印象は秀才型という事だったが、外れていないと思う。が、単なる学校秀才ではなく、倉数さんにも十分おかしな所があった。例えば、彼が自称する「ジャンク浪漫派」なるものも十分変である。超高学歴なのにワープアという生活振りもユニークである。中国の大学で働いているというのも、独特である。
倉数さんが、柳原さんの小説を貶した事があったが、その傳でいけば攝津の小説など嘲笑の対象にしかならぬであろう。下手糞過ぎる。技術が無い。構成も方法も欠如している。だが、攝津は下手でも書き、そしてそれを公表する事、敢えて「恥ずかしい」事をする事を自らに課していた。倉数さんや田口君は立派な小説を書いても、それをインターネットで公開したりはしない。攝津はそれを勿体無い事だと感じていた。自分は下手糞なりに公開を続け、嘲笑や嘲弄の的になろうと、裸踊りを続けようと決心していた。

自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (下) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (下) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)