仮面の酷薄-3

摂津正の仮面の酷薄 → 仮面の酷薄と改題します。

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僕は、同性愛の出会い系サイトで何人もの男と寝たが、それは単に性的関係であるに過ぎず、恋愛には発展しなかった。性的行為の後はいつも虚しさが襲った。出会い系サイトや『バディ』などのゲイ雑誌で知り合った人の中で、僕の審美眼に適う男の子は一人しかいなかった。その一人も、おじさんらと性行為に溺れ、体を売ろうかなどと言っては僕から金を巻き上げようとする、そういう子だった。だが彼は美しかった! 僕は彼に再会したかったが、無理だった。
僕は一時動くゲイとレズビアンの会(OCCUR)に在籍していた事がある。大学生の頃だ。僕は、自分が同性愛者かどうか、経験を通じて知りたい、と願ったのだ。結果は、精神病的錯乱だった。訳の分からぬ混乱の裡に僕は会を辞めた。
今もって、僕には自分が同性愛者かどうか分からぬのだ。同性と寝る事はある、だが愛する事は無い。まだ運命の人と出会ってないだけなのか? だがそんな出会いが何処にある?
他方、女性も美しいと僕は思う。只女性と性的関係を持つ事は、かつての大学生の頃の自分ならともかく、今の自分には無理だと思う。それは、精神病の薬のせいで、性的不能になっているからだ。パキシルというのだが、それを飲むと性欲が無くなり勃起、射精出来なくなる。恐らくそれを生涯飲まねばならぬのであろうから、生涯不能なままであろう。性的不能なら、自分が何者であるか思い煩う事に何の値打ちがあろうか! 要するに僕は不能者である。それだけではないか?(続く)