multi-LETS

西部忠と(少なくとも一時期の)柄谷行人は、multi-LETSが高度資本主義下の複雑な主観性のありように対応している、と考えていたふしがある。西部忠岩波ブックレット地域通貨を知ろう』で、個人の「多重人格性」にまで言及しているが、これは地域通貨研究者/実践家としては珍しい姿勢だと言える。地域通貨をやる人は大抵、顔が見える取引だとか言って、人格的関係の回復に望みを見出しているものだが、西部忠の場合は事情が若干複雑らしい。個人が多数の通貨(=メディア)に多元帰属して、それぞれに自己を部分的に開いていく、といった姿が理念型として想定されている。これはイメージとしては面白いと思うが、制度的に具現化していくのは若干骨が折れるかもしれない。