TVドラマ

私は映画やTVドラマをあまり観ない。が、今日偶然、TVで以下の番組を観て、いろいろと感じたり考えたりしたことがあった。

性的少数者を単に奇異なものとして扱うような差別的な番組ではなかったが、男女という性別役割が極度に強調されており、且つ、主役の二人が最後に心中という悲劇的な最後を迎える設定になっているところに限界を感じた。よねざわいずみさんhttp://www.izumichan.com/と数年前「あかね」でお話しし、著書『トランスジェンダリズム宣言』を読んだ時に感じたことだが、「かわいそう」ではない、幸福なトランスジェンダーの人達もいるということを考慮しなければならない。性の真実は「秘密」でありそれが暴かれることは死に直結するという図式に、幸福で多様な性的少数者が現にいることと違う観念的なものを感じた。

また、家族で食事をしながらこの番組を観ていたのだが、父親が性的少数者がTVに出てくることに否定的なことを言ったのが一緒にいて辛かった。私は歳もとったし、太ったしで、女装ももうしないけれども、私自身性的少数者である。そういうこと自体忘れがちな日常を暮らしているけれども、以前はいろいろと葛藤があったし、家族や周囲との関係で辛いことも経験してきた。そういう事情の本質は何も変わっていない、単に私が諦めただけだということがよくわかった。

番組を観ながら、子どもの頃の性のイメージを思い起こしていた。まず、何かで見た、若い時のカルーセル麻紀http://carrousel.co.jp/の写真──新聞か何かだったか、白黒だった記憶がある──がとても綺麗だったということ。そして、カルーセル麻紀吉行淳之介の対談(2回対談している)を繰り返し読んだことを思い出した。カルーセル麻紀が性転換手術を受ける前後に対談していて、手術の前後で生活がどう変わったかを詳細に話していたのをよく覚えている。書名は『恐怖・恐怖対談』だったか? そして、数年前、カルーセル麻紀が女性に恋愛をしたことが公になって、「性転換手術をしなければよかった」というコメントをしたのがマスコミに報道されて、性に関わることは本当に難しいと思ったのを思い出した。

それと、大学生の頃に観た映画『薔薇の葬列http://www.imageforum.co.jp/matsumoto/mtm-br2.htmlに出ていた若いピーターがとても綺麗だったこと。ピーターが他のゲイたちと買い物に行く場面や新宿の人々のドキュメンタリーの挿入があって、それを生々しく覚えている。

この番組の視聴を契機に、かつての若い私が抱いていた性のイメージの感触のようなものを想起した。今私が抱いている性のイメージ(それは極めて貧困なものである)はそれとはまるで違う。私はいわば性をまるごと放棄してしまったのだ。精神的安定と引き換えに、性という危険なものを、自ら棄て去ったともいえよう。その選択が正しかったかどうかは分からない。しかし、私としてはいろいろと努力や模索、試行錯誤はしてきたのである。その結果、私には豊かな性体験はできないと考えるにいたったのだ。

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/tv/20060629et08.htm?from=os1

浅野温子 念願の難役 性同一性障害に理解を
「薔薇の微笑―」日テレ系、4日

「長年の念願だった役を演じられてうれしい」と語る浅野温子 女優・浅野温子が、7月4日午後9時から日本テレビ系で放送されるドラマ「薔薇(ばら)の微笑 愛すれど心哀(かな)しく」に主演する。演じるのは、性同一性障害に悩む雪乃役だ。女性の心を持ちながら男として生まれたため、性転換手術まで受け、懸命に“女の幸せ”をつかもうとするヒロインを熱演している。(市原尚士)

「本人のつらさ伝えたい」

原作は、夏樹静子が1975年に発表した「黒白の旅路」。性同一性障害は、脳が認識する心理的な性と肉体的な性が一致しない疾患で、小説が刊行された当時は、まだ奇異の目で見られていた障害だった。しかし、最近では、障害を持つ児童を小学校が受け入れたり、競艇の女子選手が男子選手として認められたり、市民権を獲得しつつある。

高橋秀明プロデューサーは、「興味本位で面白おかしくとらえるのではなく、まじめにこの障害をテーマにしたドラマを作りたかった」と話す。主人公は、男と女両方のキャラクターを演じ分けなければならない難しい役どころとなるだけに、配役にも「視聴者が『なるほど、この人なら』とうなずける俳優でなければだめだった」と話す。

障害を乗り越え、愛を成就させる朝永(西郷輝彦)と雪乃(浅野温子) 偶然、浅野は10年前から「はっきりした理由は分からないけど、ずっと性同一性障害の役に挑戦したかった」といい、周囲にもそう話していた。これを聞きつけた高橋プロデューサーが「しっかりした演技力を持つ浅野さんに、ぜひ演じてほしい」と依頼した結果、快諾が得られた。

難役に挑んだ浅野は「女性の弱さを感じさせる、『守ってあげなきゃ』と思ってもらえるような女性を演じる必要があった。30年女優をやってきて初めての経験で、とっても新鮮に演じられた」と振り返る。男役も初挑戦で、ドラマの中でスーツ姿を披露しているが、「着心地はすごく良かった」と笑う。

高橋プロデューサーと浅野の共通認識は、「性同一性障害のつらさは本人にしか分からない」という点だ。障害に苦しむ主人公の姿を見てもらうことで、「社会的な認知度がより高まり、周りの理解が得られるようになれば」と浅野は期待している。

〈あらすじ〉 行方不明になった義兄・岩田(デビット伊東)を捜していた一級建築士の滝井(岡田浩暉)は、岩田が会社社長の朝永(西郷輝彦)宅に出入りしていたとの目撃情報を入手。しかし、滝井の質問に、朝永の内妻・雪乃(浅野温子)は「岩田をまったく知らない」と答える。そんな中、朝永の刺殺体が伊豆の天城山中で見つかる。

(2006年6月29日 読売新聞)