書評

書評:「戦後時代」の夕焼けの中で

昨日ちょっと読んだ諸橋泰樹『「戦後時代」の夕焼けの中で:ポピュリズムとルサンチマンの同時代を読む』(現代書館)の感想を書く。著者の諸橋氏は1956年生まれのマス・コミュニケーション学、女性学、社会学研究者で、他に『ジェンダーの罠』、『ジェ…

三島由紀夫『禁色』

読了したが素晴らしい小説だと思った。千九百五十三年の段階でこれだけ同性愛を踏み込んで描ける筆力は凄い。例えば坂口安吾が戦後に発表したルポでは、作家は警察の視線と同一化し、公園でハッテンする同性愛者達を異物視している。そこへくると、三島由紀…

書評:三島由紀夫『鏡子の家』(新潮文庫)

二千十年一月二十二日金曜日 攝津正三島由紀夫の『鏡子の家』は真の傑作である。僕は三島由紀夫の才能に脱帽した。 『鏡子の家』がどこが素晴らしいのかというと、朝鮮戦争後という「一つの時代」の精神を見事に捉え切っているところである。田中西二郎とい…

怠ける権利

図書館で十冊本を借りてきた。そのうち、三冊が、労働関連の新書で、濱口桂一郎『新しい労働社会─雇用システムの再構築へ』、中野麻美『労働ダンピング』、雨宮処凛『プレカリアート』だった。 読むうちに、辛い気持ちが強くなってきた。のみならず、身体的…