丁字、菊花等は…
丁字、菊花等は、汚処の臭を消すため、また一つは刺激剤とも催淫剤ともなり、麝香、竜脳、ことに然り。古ローマには蕁麻の細子を用いしことあり。苛痒くするなり。例の紫しょう花(淡水生の海面なり。白井博士談に、東京下谷に売りおる店ありとのこと。小生、去る大正十一年日光で採れり)、まず専門の男に後庭に一物を入れもらい(直腸を広くするため)、ただし洩精はせずに幾晩も養生し寛闊にしてもらい、抜き去った跡へ棒薬を入るる。はじめは胆礬(硫酸銅)を紙線にひねりこめて入れ、直腸裏幕を腐蝕して感覚を鈍にするなり。次には山椒の粉などを棒薬にして入るる。しかるときは痒くなりて、なにか入れて撫でもらえば快くなるようになる。支那では毛病を起こさしむるとあって、行なうた後に羊毛などを入るるなり。しかるときは常に痒きゆえ、なにか入れてほしく思うようになるなり。かようの腐蝕鈍感剤と起痒剤を棒薬といいしなり。(南方熊楠「カゲロウとカゲマ、御座直し、『弘法大師一巻之書』、その他」、『浄のセクソロジー』河出文庫、p.393-394)
南方熊楠コレクション〈第3巻〉浄のセクソロジー (河出文庫)
- 作者: 南方熊楠,中沢新一
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/11/10
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