倉数茂『黒揚羽の夏』(ポプラ文庫ピュアフル)
再讀。
- 作者: 倉数茂
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2011/07/05
- メディア: 文庫
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黒揚羽の夏 (ポプラ文庫ピュアフル)[本/雑誌] (文庫) / 倉数茂/〔著〕
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私自身であろうとする衝動 関東大震災から大戦前夜における芸術運動とコミュニティ
- 作者: 倉数茂
- 出版社/メーカー: 以文社
- 発売日: 2011/09/09
- メディア: 単行本
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「もしかしたらきみは、何か問題を抱えているんじゃないかな。もちろん悩みのない思春期なんてほとんどありえないし、もしそんなやつがいたとしたら、それは単なる救いようのない愚か者だ。もし嫌でなかったら、きみのその悩みを少しだけ僕に打ち明けてみてはどうだろう。実は僕は人の苦しみをちょっとだけ味見してみるのが好きなんだ。満足が凡庸で退屈な人間しか生み出さないのに対し、苦しみは人を興味深い存在に変えるからね。どう、僕に話して、わずかでも楽になってみないかい」(p153-154)
「おまえたちは生きているのが地獄だと思ったことはあるか。あんまり苦しいんで何も感じないでいたら、どんどん自分が空っぽになっていく感覚がわかるか。一分一秒が地獄だと、人は感覚を断ち切ってしまう。見えているものを見ず、聞こえているものを聞かず、痛みを痛みと感じず、屈辱を屈辱だと気づかない。そのようにして、俺は凍りついた空っぽの部屋になった。空っぽの部屋に、怒りと哀しみだけが雪のように降りつもった。初めてあの映画を見たとき、空っぽの俺の中に何かが入り込んできてしまったんだろうな。それは俺を占領してしまった。それから俺はずっとそいつと一緒に生きてきた」(p261)