中村紘子『チャイコフスキー・コンクール ピアニストが聴く現代』(中央公論社)

スティーヴン・ビショップ=コワレヴィッチというアメリカの中堅ピアニストがかつて語ったところによれば、アメリカに優れたピアニストが育たないのは、ひとえにニューヨークに住むホロヴィッツの存在のせいだということになる。アメリカの若いピアニストはみな、その未熟な時期にホロヴィッツに出会い、彼の魔力の虜となってしまう。そして自己の才能も省みずにホロヴィッツを模倣し、自滅する。

もうとうの昔にそのホロヴィッツも亡くなっているわけだが。どうなんだろうね。