不思議ちゃん攝津正、倉数茂さんの小説を読む。

読後感は「怖い」。つまり例えば最初に『リング』とかを観た時と同じ。ミステリーやサスペンス要素もあるが、ホラー風味がまぶしてあり、それが印象に残った。
「合理的」には割り切れない場面が幾つもあり、それがこの小説を恐怖・幻想・怪奇小説テイストにしている。水たまり(鏡)のエピソードや携帯電話とか、死者との対話とか、面白い。
シュルレアリズム?映画が物語の鍵を握るわけだが、その映画を描写した部分は圧巻。まさに悪夢に出てきそうで、夢の印象を醸し出す技術は確かなものだ。
まあ猟奇殺人ものとしては『サイコ』や『羊たちの沈黙』、漫画では『Monster』などがあるわけだが、小説で過去に類似作があるのかどうかは知らない。猟奇殺人ものは或る精神医学的、性的倒錯のパターンがあって、倉数さんの作品もそれを踏襲しているわけだが、それは類型だとしても、何か重い印象を残す。不気味。