文化人=プレカリアート

いーぐる掲示板で紹介されていた、ジャック・アタリの『ノイズ』はさっぱり分からなかったのだが(翻訳のせいなのか、もともと難解なのかは判断しかねる)、モーツァルトショパンが酷い貧窮状態に置かれていたということは伝わってくる。
音楽の歴史でいえば、大体モーツァルトくらいまでが宮廷に仕えて生活するという感じ、ベートーヴェンが、貴族から独立し、市民音楽家の道を切り開いたという感じなのだが。ショパンが貧窮していたというのは、リストと違ってコンサートの仕事が余り無く、レッスンをしたりして喰っていたということだ。
それで思ったのだが、近代において文化に携わる人間一般が不安定な生活を強いられていた=プレカリアートであったということだ。
それは哲学者にも言える。哲学史を見れば、カント以降、哲学者の多くは大学教授として国家公務員になる。だが、それにしても、現代でいえば非常勤講師みたいなもので、生活は不安定、金持ちの子弟の家庭教師などをして喰い繋がねばならなかった。カントより前の哲学者ら、デカルトスピノザライプニッツらは、家の財産を喰い潰すか、パトロンに援助されて生活していた。音楽史でいえば、宮廷音楽家みたいなものかな。そして、仕えている宮廷から無理を言われて死んだりとか。ちなみに、スピノザがレンズ磨き労働で生計を立てていたというのは嘘だからね。ルソーが写譜の仕事で生計を立てていたというのは事実。
まあ、文化で喰おうという人間が不安定な生活を強いられるというのは、今に始まった話ではないということだ。