二和向台サーガ

私は千葉県船橋市にある二和向台という街に年老いた両親と暮らしている。正確な地名は千葉県船橋市二和東六丁目である。チロという雑種犬を飼っていたが、十年余前に老衰死した。
今日も、母親と二人で(父親は買い物には同行せぬ)、マルエツ二和向台店で夕飯のおかずを買ってきたところである。道すがら、母親が、土地建物やその他財産を全て売り払って、大分県日出市にある土地に家を建てて移住しても良い、と語る。私が応じて、私は、父母と共にこの二和向台の街に住み続けたい、と言う。私は、この二和向台という平凡な町を愛しているのである。だからずっとここに住み続けたいと思っている。
もう二十年以上、この土地に暮らしているが、街も変化した。一番の変化は、三軒あった本屋が消えたことである。街の本屋さんがなくなるということ、これは中小・零細自営がやっていけなくなっているという指標、徴候である。ブックオフTSUTAYAのようなグローバル資本だけが栄える街、そんな街が日本中で増えていると思う。二和向台もそのone of themである。
そういえば電気店も潰れたし、散髪屋も閉めたし、食堂も畳んだ。二和向台は個性の無い街になった。しかし、私は、それでもこの二和向台の街を愛しているのである。
その大きな理由が、私の家の立地条件の良さである。マルエツ、ウエルシア、リブレ京成Big-Aヤオコーなどのスーパーに近く、買い物がしやすい。また、船橋市北図書館は、二和向台駅新京成線)のすぐ向かいにあり、我が家からは徒歩10分の距離にある。本を買わぬ私には、図書館は是非必要な存在で、これは実にありがたい。だから、二和向台の街を離れられないし、離れたくないのである。
書こうと思ったのは、私が、どケチだということである。どケチな男はモテないと巷では言うが、私は、どケチでなければ生活も生存も出来ない状況にあるので、やむを得ないのである。賃労働を放棄した以上、消費を抑制するしかない。そのことがよく分かっている。身に沁みて分かっているのである。