ジャズ講義

レッスン終了後、高校生がジャズに興味を示す。レッスンしているような曲で、CDはないんですかというので、ディジー・ガレスピーの『ザ・チャンプ』から「明るい表通りで」「スターダスト」「キャラヴァン」を掛ける。そして、ガレスピーの『アフロ』収録のヴァージョン、彼が死んだ時に出たヴァーヴのベスト盤3枚組に入っている「キャラヴァン」を掛ける。こちらは、アフロ・キューバン・リズムが強調されており、リズム隊も多人数・強力。「同じキャラヴァンでも随分感じが違うでしょう?」と解説する。
おまけに、「キャラヴァン」の初演である、『デュークス・メン』も掛ける。
「これがね、デューク・エリントンのジャングル・スタイルってやつでね。黒人はアフリカ大陸から奴隷として連れてこられたといっても、もう何世代も経っているので、アフリカの記憶とかないんですよ。だからエリントンは想像力で、彼なりのアフリカを描いた。それがジャングル・スタイルです。」と解説を加える。
すると高校生が、ジャズの起源は黒人なのかと訊いてきたので、答えて次のように言う。
「アフリカから黒人が、奴隷として連れてこられたわけだけれども、部族もばらばらで、強制労働させられるだけの毎日でした。そこに南北戦争が起き、(一応括弧付きながらも)奴隷が解放された。そして、南軍のご主人様らが戦死して、楽器類が安く市場に出たり、放置されたりもしていた。解放された奴隷らはそれらで見よう見真似で音楽を始めた。それがジャズの始まりです。
もう一つ忘れてはならないのがクレオールといって、これは白人と黒人の混血です。クレオールは、もともとは社会的地位は高かった。ところが、南北戦争後、黒人奴隷が解放されると、いわばとばっちりを喰って、白人らからの反感を買い、社会的地位が下がります。もともと文化的教養もあったクレオールらと、解放された黒人奴隷とが共同して、ヨーロッパ古典音楽とアフリカの音楽の融合のようなことを始めたのが、ジャズの起源ですね。」
というような話をし、黒人、奴隷、貧困、悲惨というイメージがあるが、デューク・エリントンマイルス・デイビスは金持ちの息子に生まれたから音楽教育も受けられたことなども話し添えた。
だが、クラシックの演奏家と比較すると、ジャズメンにはどこか暗い面がある。優れた演奏家でも、キャリアに5年、10年穴が開いていることは珍しくない。麻薬、精神病、収監などがその理由。そういうジャズの暗部も話したところで、時間が来て、高校生は帰っていった。
私の話が参考になればいいのだが。