引用

書評3は滞っているが、気になる箇所を引用&指示しようと思う。

労働側のまともな反論
 これに対して、労働政策審議会における労働側の反論は筋が通っていました。JAM(機械金属産業労組)の小山正樹氏は「本当に自律的に、仕事量も自分がすべて調整しながら働いているんどという人はいないのではないか」「本当にそういう人がいるというのでしたら、具体的な職場なり働き方の方においでいただいて、ヒアリングでもしてみたらどうかと思うのです」と皮肉をかませながら、「実態としては、そこに自由な働き方、自立的な働き方などというのはないのだと。むしろ長時間働きすぎて、それによって過労死や過労自殺が生じているのだという実態を踏まえていただきたいと思います」と突っ込んでいる。
 この頃、過労死遺族会厚生労働省に「自律的な労働制度」を導入しないように求めました。「労働時間規制がなければ過労死・過労自殺に拍車がかかるのは明らか。犠牲をこれ以上出さないでほしい」と、規制の厳格化や企業への罰則強化を求めたということです。
 しかし、実は経営側にはこれに対する再反論の余地は十分あったのです。そもそも上記の日本経団連の提言では「労働時間の概念を、賃金計算の基礎となる時間と健康確保のための在社時間や拘束時間とで分けて考えることが、ホワイトカラーに真に適した労働時間制度を構築するための第一歩」と述べ、「労働者の健康確保の面からは、睡眠不足に由来する疲労の蓄積を防止するなどの観点から、在社時間や拘束時間を基準として適切な措置を講ずる」ことを主張していました。経営側の立場から弁護士活動をしている経営法曹の西修一郎氏は、「結局、賃金対象労働時間ではないが、安全配慮義務という観点から、拘束時間は結局は管理せざるを得ないですね。だからそういう意味で拘束時間という言い方を私はしますが、それを考えればエグゼンプションをどうやっても、どういう制度をやっても、拘束時間を管理するという制度は、結局は残るのです」と述べている。
 もし経営側がこういう論理を提示して、「そうだ、在社時間や拘束時間の上限という形で労働時間を管理するんだ。それなら時間外手当は適用除外でいいんだな」と反撃すれば、労働側に二の矢があったかどうかはたいへん疑わしいと思います。しかし、そういう議論は一度も行われませんでした。(p32-34)

  • 解雇規制は何のためにあるのか?(p51-p57)
  • 日雇い派遣事業は本当にいけないのか?(p80-p82)

新しい労働社会―雇用システムの再構築へ (岩波新書)

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