から帰る
僅か八時間弱働いたくらいでこんなにも疲れるものなのか、という程草臥れた。どういうわけか眠く、そして猛烈に喉が渇いた。マーレで、CDを六枚受け取り、新浦安駅で百五十円払ってポカリスエットを自動販売機で購入、一気に飲み干す。
永井荷風の『すみだ川・新橋夜話 他一篇』、新橋夜話から「掛取り」「色男」「風邪ごこち」と夢中になって読み進める。荷風を通俗作家と断じたのは坂口安吾であるが、そんなことないじゃないか、現代に出しても十分通用する文章だと思った。そして島田雅彦の『溺れる市民』などを連想したのだが、三島を読んでも島田、荷風を読んでも島田と島田雅彦を連想してばかりなのは僕が唯一読み込んだ作家が島田雅彦だからで致し方がないことだ。
新浦安駅で六時二十七分発の電車に乗ろうと同僚は駆けていたが、僕は走る元気もない。五十一分の武蔵野線、府中本町行きに乗り込み西船橋駅へ。西船橋駅から総武線に乗り換えて津田沼駅へ。新京成線新津田沼駅から二和向台駅へ。
荷風を読みながらブッカー・アーヴィンの『ヘヴィー!!!』を聴くが、このアルバムで素晴らしいのはブッカー・アーヴィンのテナーでもジャッキー・バイアードのピアノでもなく、ガーネット・ブラウン Garnett Brownという人のトロンボーンの溌剌さだと感じる。
ところで宮本顕治は芥川龍之介を「敗北の文学」と断じたが、僕の興味関心はプロレタリア文学にではなく、敗北の文学の側にある、と思う。凡庸な意見かもしれないが。吉本隆明に『悲劇の解読』という批評集があり僕は好きなのだが、個々が陥る運命的な悲劇を読み解くことこそ大事なのではないか、とこれまた平凡な感想を持っている。
帰宅したら母親が夕食を作ってくれていたので、先にそれを食べる。一階に降りてきて借りてきたCDを聴こうとするが、図書館で只で借りられる物はみんな大事にしないのだろうか、ロン・カーターの『ディア・マイルス』というのが傷だらけで再生できないことが分かり今落ち込んでいるところ*1。
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*1:ああ、他のは傷ついていなかった。良かった。