ジャズの歴史に関して私見

私の意見では、ジャズの歴史は近代という営みと切り離せないものです。
アメリカの「発見」、次いでアフリカ人の奴隷化、南北戦争南北戦争で南軍が負けたことによる「奴隷解放」を含むもろもろの出来事。ジャズはそれらと切り離せません。
南北戦争で戦死した南軍の軍楽隊の楽器を奴隷や元奴隷が手にしたところからジャズは始まっていますから、物質的にもそういえます。また、それまで高い地位を占めていたクレオールが、南軍の怨恨により、(元)黒人奴隷と同じ社会の最下層に落とされ、そのクレオールがヨーロッパの楽器の演奏法などを仲間に教えジャズが形成されていきました。

ブラック・イズ・ビューティフルと言い、ジャズにおける「黒さ」が話題になったりします。しかしそれは、生物学的本質などではなく、社会的構成物なのです──このような考え自体別に目新しいものでないことは承知していますが。その証拠に、アフリカの音楽はあまり「黒く」ないと言いますし、アフリカ旅行を契機として生まれた渡辺貞夫のアフリカ色の濃いアルバムも「黒く」ありません。だから、黒さと漠然と言われるものは、人種差別も含めた社会的諸条件なり諸経験の総体から生み出されたものなのです。