あかね水曜日誌 2007/12/12

16:30にあかねに入る。独り食事をし、お茶を飲んで、お金の勘定と会計日誌をつける作業をする。19:00、元黒テントの金子さんがいらっしゃる。音楽は菊地雅章『ススト』を掛けていたが、金子さんが現役の俳優だった頃、黒テントと赤テントのなんとか興行?があった時、中央にトラックに載せられたピアノがあり、そこでプーさん(菊地雅章)がピアノを弾き、それがオープニングだったとのこと。'60年代の話である。「プーさんは、とても優しい、静かな人だった」と金子さん。プーさんの話題で盛り上がり、続いて『シャンソンズ・ド・エディット・ピアフ』(これも最高!)を掛ける。ぼくが日本で、いや世界で一番好きなピアニストは多分プーさんではないかと思う。

外国人の若い男性二人組が入ってきて、ビールを飲んだ。推測だが、ぼくには彼らはゲイで、恋人同士のように見えた。彼らはビールを一瓶飲むと帰っていったが、帰りぎわに金子さんが「今度来る時はこれを連れてきて!」と小指を立てる。そういう異性愛主義的な身振りにちょっと嫌気がさすが、ともかくその場はそれで収まった。

あかねの電話が鳴る。出ると、女性の声で、「あなたキヨスケさん? 似非原さん? そこに中国の人肉男いるでしょ。キヨスケさんに訊けば分かるから。出して!」と言う。「いや、そんな人はいませんよ」とぼく。「いや、いるでしょ」と女性。「今、ぼくとお客さんが一人で、そんな人はいません」と押し問答。一旦電話を切る。が、すぐにまた掛かってきて、「中国の人肉男」……。金子さんが電話に出てくれて「俺が中国の人肉男だよ」と言う。すると女性は「声が違う」と言い始める。金子さんは「風邪引いてるんだ」と誤魔化す。「何処にいるんだ?」と金子さんが訊いたら、荻窪とのこと。「こっちへ来いよ!」と金子さんが言うと、女性はタクシーで来るという。

バラードさんが来店。不審な電話の話をすると、「あ、その人、3日前もあかねに来てましたよ。Y原さんにストーカーしていて」とあっさり特定される。56歳の女性らしい。金子さんは、「俺帰るから、もし来たら、中国の人肉男は帰ったって言っといて」と帰っていく。

少しして、風のような勢いで女性があかねに入ってきた。「中国の人肉男、中国の人肉男」と呟いている。そして、あっという間に「それじゃあね、さよなら!」と帰ってしまう。意味が全く不明だった。

たかおんさんが来て、インターネットラジオを始める。たかおんさんがヤフーオークションで100円で落札したという集音マイクで音を拾う。

そのうちに、キヨスケさんとゆっくすさんがいらっしゃる。今回の騒動について、3人で話し合い、その間ラジオはたかおんさんとバラードさんに続けていただくことにした。いつも持ち込みのチェリーさん、それからナベサクさんがいらした。

話し合いが終わり、鉄砲水三郎さんを待っていたが、ぼくの終電があるので、あかねを出て帰った。電車内で『ススト』を再び聴き、これが本当に異例の、素晴らしい作品であることを再確認した。『オン・ザ・コーナー』『アガルタ』『パンゲア』からさらに進化したマイルスとでもいう感じだ。これほどに凄い音楽家が日本にいるということに、本当に驚いた。世界的にみても、プーさん(菊地雅章)の仕事は卓越している、と思う。