32歳不安定音楽家 希望は、ベーシック・インカム/攝津正(売れないオカマ)
私は千葉県の船橋市で、音楽稼業=家業をやっている、売れないオカマ(32歳、生物学的性別は男性)である。自分が「天才」なのではないかという予感はとうに過ぎ去った。退屈な日常を、凡庸な人としてだらだら生きるだけの日々を送っている。が、「何か」を求めている。そのために生の総体が輝くような、一つの奇蹟を求めている。私の期待は無駄に終わるのだろうか。「何か」は遂に私には訪れぬまま、生涯を終えることになるのだろうか。──私は待っている。希望のなかで? 絶望のなかで? それは分からない。ただひたすら、或る醒めた、そして冴えた感覚がある。自分の生なんてこんなものさ、というシニカルな気持ちと、過剰で予測不可能な出来事の到来を信じる気持ちとの狭間で、揺れ動いている。私にとって大事なのは、唯一の現実世界、「生活世界」と呼ばれるもの、言い換えれば共可能なもろもろの特異性が収束・収斂するただ一つの世界ではない。絶対無限の多数性、複数性が保証された「カオスモス」、もろもろの特異性の絶対的且つ全面的な発散なのだ。ニーチェに倣って、それを永遠回帰と言い換えてもいいだろう。その肯定のために、今日も私は生きる。運命愛! ただ一つのものを肯定するとともに、絶対的な多数性、複数性、潜勢力を肯定すること…*1。(582字)